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被相続人が死亡したので、被相続人の口座からお金を引き出して葬儀費用として支払いました。法定単純承認になってしまい、相続放棄ができないのですか?
法定単純承認をした場合には、相続放棄ができないとされています。民法では次のように規定されています。相続放棄は、「相続の承認及び放棄は、第九百十五条第一項の期間内でも、撤回することができない。」(民法919条1項)と規定されており、法定単純承認として「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。」(民法921条1号)とあります。
従いまして、ご相談の場合には、葬儀費用を被相続人の口座から支出した場合に、これが相続人の財産の処分として法定単純承認となり、相続放棄ができないのではないかが問題となります。
大阪高決平成14年7月3日「…被相続人に相続財産があるときは、それをもって被相続人の葬儀費用に充当しても社会的見地から不当なものとはいえない。…相続財産から葬儀費用を支出する行為は、法定単純承認たる「相続財産の処分」にはあたらない」
その他、葬儀費用に関しては、相続財産の処分にあたらないという裁判例はあります。ただし、いずれも被相続人のこれまでの生活状況などや相続人の事情等を踏まえた、一般的な範囲内の葬儀に関しての事例といえ、全ての葬儀費用は相続財産の処分にあたらないという一般論化されたものではない点は注意が必要です。
この裁判例等を踏まえると、一般的な範囲内の葬儀費用であれば、相続放棄が認められる可能性が高いと思われます。ただし、相続放棄にあたっては、裁判所からの照会があった場合には、葬儀費用として支出したことを正確に回答する必要があります。そのため、引き出した金額や葬儀費用の内訳がわかるように、見積書や領収書など資料を保管しておくべきでしょう。
なお、葬儀費用を被相続人の財産からではなく、相続人等が支払った場合に、その負担を誰がするのかという問題がありますので、こちらの記事(葬儀費用は誰の負担?)もご覧ください。
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